アイランド(Island)ロックウェルの記録 座標・内容まとめ
優れた化学者なら誰でも、実験の重要性を理解している。厳しい実験を経なければ、
薬にはなんの価値もない。だがこの島のあまり知的ではない連中に、どうやってそのことを
教えればいいのだろう? 実験の初期段階において、メソピテクスは被験者として重宝するが、
後々ある程度の安全性が確認できれば、やはり人間で試したいものだ。
ここで言う「被験者」とは、もちろん自ら志願した者達であり、科学の発展のために多少の頭痛や
強い吐き気を起こすことを厭わない連中だ。ラッフィングスカルが厳密には「志願」していない者を
被験者として差し出してきたことがあったが、流石に断った。
しかし最近志願者が激減したことを鑑みると、その判断を時折後悔する。
ミス・ウォーカーの突然の訪問は、私にとって常にうれしい驚きだ。シャークスとブラックサムズに
頭を悩まされたあとでは、彼女とお茶を飲みながらARKの不可思議な生態系について語り合ったことが、
何よりの息抜きになった。科学への愛を共有できる知的な仲間が見つかったことを、神に感謝しよう!
しかし彼女の植民地訛りは、私には魅力的に感じるが、母国に戻れば、
上流社会の一員になる際の障害になりそうだ。そのことを考えると心が痛む。ARKにまつわるもう1つの事実は、
近代社会には全く見られないエリート集団の存在だ。ミス・ウォーカーと私で協力し合い、
我々によく似た人材を発見し、育成することができれば、ここは科学者の理想郷となるだろう。
次の実験では、島にいる部族よりもっと大規模な部族から被験者を募ることにした。
彼らのつまらない揉め事を辛抱強くなだめた私の頼みとあれば、喜んで協力してくれるはずだ…
だがそう思った私が浅はかだった! 彼らは頼みを聞くどころか、こちらに頼み事をしてきたのだ。
攻撃的な性格の新興部族が存在すると彼らは言っている。その部族のリーダーとの交渉には、
誰も成功していないそうだ。そこで当然のごとく、彼らは私に白羽の矢を立てた。面倒は避けたいが、
彼らが頭を絞ってそう決断したなら、無下にもできない。ネルヴァというその部族長と対等に話し合えるのは、
おそらくサー・エドモンド・ロックウェルしかいないだろう。
大発見だ! 私の仮説は正しかった。オベリスクの麓にある小さな演壇とアーティファクトは、
間違いなく近い関係にある。正直、もっと早く気付くべきだった!
アーティファクトと島の上を浮遊しているオベリスクの様式が類似しているのは明らかだ。
これらは間違いなく同じ文化によって同時代に作られたものだ。
アーティファクトとオベリスクは両方とも素晴らしい状態に保たれているのに、奇妙なことに
文明の痕跡は皆無だ。あり得ないだろ? 適当な離島にやって来ては、構造物を建て、
洞窟に骨とう品を詰め込んで、何の痕跡もなく消えるような文明があるか? 理解できない。
しかし私の好奇心が刺激されたことだけは確かだ。
なんてことだ… 被験者数は増えたものの、私の研究に対する情熱が消えてしまった。
先日の冒険の旅で燃え上がったはずの探究心は、どこへ行ってしまったのか。
気がつくとうわの空になった自分がいる。忌々しい!
おそらくあの冒険は恵みではなく災いだったのだ。考えてみると、私が見つけたオベリスクや
アーティファクトについてなら、いくらでも熱意を持って助手達と語り合える。
仕事を忘れたいときでさえそうなのだ。自分でも説明できない何かに私は引きつけられている。
それがまるで強い引き潮のように、私の思考をさまよわせているのだ。
ミスター・ネルヴァの気の短さには、うんざりしてきた。オベリスクを調査する時間がほとんどないまま、
我々はミス・ウォーカーが言及したあの洞窟へと出発することになった。
オベリスクに関して、私より彼女のほうが詳しいとネルヴァは思っているか? そんな馬鹿な!
私のほうが科学者として優れていることは、誰の目にも明らかだ。それに、私は、彼の正式な顧問であり、
ウォーカーはただの囚人にすぎない。そもそも彼女は私がここに居ることすら知らない。
とは言ったものの、私は自分の能力を証明する必要性を感じている。あの洞窟に何があったとしても、
正体を突き止めるのは私だ。オベリスクの謎を解くのは、ミス・ウォーカーでもネルヴァでもなく、私なのだ。